七日目・後@
 
 
 
俺のこと何だと思ってんの!?
 
金切り声で叫んだ。喚いていたと言ったほうがいいかもしれない。
ふざけんな!何で!
 
心の底から真っ黒に染められた気がした。噛み付くみたいに掴みかかって怒鳴りつけた。土方クンの目は相変わらずあの目。
 
昔の俺と同じ目をしたままだった。
 
敵がいつ襲ってくるかわからない恐怖、いつ終わるかわからない拘束生活への疲弊。
その目がそれを俺に訴えていた。
 
ふざけるな。
土方クンは俺と一緒にこの部屋にいるのがたまらなく嫌ってことだよなぁ。
俺が昔戦場にいたのと同じ状況だって言いたいわけ?まさかねそんなわけないよね?
でも。
じゃあ、何でその目をしてるんだろう。
戦時中、鏡なんか見なくてもわかった。絶望して疲弊しきった目をしていること。周りの仲間も敵も同じ目をしていたから。
敵兵がいつ来るかわからないいつしんでもおかしくない終わりの見えない死のレース。
戦争は終わった。いつか終わるものだ。
でもこの生活は終わらないよ。死ぬまでずーっと。
でもずっとそんな目をしてるっていうんなら潰しちゃうよ。

俺は十四朗の何?
 
はく息を感じるほど顔を近づけると小さな悲鳴が聞こえた。ひぃ、って聞き逃しそうな小さな声。
こい、びと
あ?何て?聞こえないけど
 
俺はそう言ったけど本当は聞こえていた。心がこもっていないのが腹だってどうしてももう一度言わせたくて聞き返したんだ。
まるで俺が言えって言ったから嫌々答えたみたいだったけど俺のこと好きって誓ったよな土方くん。間違いなんかじゃないついこの間の日記に書いてあるよ。自分に言い貸せているような気持ちになりながらつい、顎を掴む指先に力が入った。このまま押しつぶしてしまえるような気もした。
 
恋人だ
 
ぐずぐず鼻をすする音をさせながら掠れた声で聞こえた。
泣いているから。疲れきっているから。顎を掴まれてうまく喋れないから。そんなのは言い訳で俺が恐いからそんな声を出しているように思えてきた。
恋人なのに何でそんな恐がってるの。俺は敵兵が恐かったよ確かに。でもそれって当たり前じゃない?
いつ俺のこと刺すかもしれないし殺すかもしれないんだよ。
でも恋人はそんなことしないじゃん。
まじ何で泣いてるんだろう?
むかつくなぁ。顔が変形するくらい殴ったら何とか言うかなぁ。
そう思ってこぶしをグーに握ってみたけどいざ殴るとなるとためらわれた。こんな綺麗な顔ぼこぼこにしちゃ勿体無い。
まぁ色々言いたいことはあったけど俺は全部我慢した。
泣いてるのに責めたら可哀想だしね。何より、恋人だって言われてむかつく気持ちがだいぶ緩和された。
でも口を開いても優しい言葉はかけられそうにない。
どうしようか、と思ったが結局黙ったままさっきの続きをー…そう、朝ごはんをあげることにした。
 
顎を掴んだまま俺はひざ立ちになり、腰を土方クンの頭の位置と同じにもっていった。
この日記で触れなかったけど、俺のは完全にたちっぱなしだった。まぁよく考えてみれば俺は完勃ちのまんま土方クンを殴ったり叫んだりしてたわけだ。
そこだけ見てりゃただの変態だなぁと俺はその時ぼんやり思った。
土方くんはぐずっている、
恥ずかしくてパクつけないんだ。恥ずかしがりだから。
興奮で背筋がぞくぞくした。たまらなくなって腰を突き出して俺の一物を土方君の口にすりつけた。もう俺我慢出来ないんだ。土方君の体見るだけでこんなになってんだよ。硬い?熱いよね。今感じただろ、慰めて抑えてよ。
カラダが熱いんだ。苦しい。なぁ、恋人なんだから吐き出した熱すら愛してくれるはずだ。
だが何度押し付けても土方君の真一文字に固く結んだ唇の上を滑って頬に擦り付けられるだけだった。それだけでも柔らかい唇に擦れて一物がびくびくと頭を振った。土方君が俺のんにキスしてるみたい。
気持ちよかった。でもそろそろしゃぶってもいいいいんじゃないかな。焦らし上手なのは知ってるけど、さ。
 
 
どーしたんだ早くしろよ。言い訳はきかねぇぞ。そんなに下の口でしゃぶりてぇか
 
俺はそう言って足を土方君の渇いた精液にまみれた真っ白なふとももにわりいらせた。
ときどきちとキスマークが混じって赤い模様のよう。味わうようにゆっくり足を股間に近づかせていく。
抵抗はなかった。抵抗する意志ではなく抵抗する力がもう土方君には残っていないようだった。
なすがままなのが楽しくて、笑いながらアナルを足の爪先で触れて撫でた。俺は満足でため息が出そうだった。
粘膜が柔らかい。毎日俺のを受け入れて、だんだんそれに慣れてきているんだ。カラダが俺を受け入れるために変わってきている。
あはは。凄いね人間って。生きていくためには変わるもんだ。
俺が気配を殺しすことを覚えたように、土方くんも。
つまり土方君は俺を受け入れなけばもう生きていけない。
 
あれれ。ここが俺の食いたいって言ってるね。なーんだそういうことかぁ。いいよいいよ。んじゃ力抜いてね
 
誓って書いとくけど俺は怒ってこんなことを言ったんじゃない。俺は土方君を変えたことが心底嬉しかったし、焦らし上手な土方くんが短期な俺を本当に怒らせる前にこうしておかなければいけないと思ったからだ。
怒ったあとで自分を止めることがどうしても出来ないとこの一週間で知った。
土方君はきゅっと唇を噛んで体を縮めたあと意を決したように俺の一物の先っぽをようやくくわえた。
柔らかい口内に包まれて快感が得られた。だが土方くんが目をつむっているのが気に入らない。指を顎の間接に入れてぐりぐり骨を押してやった。うぐう、とくぐもった声がした。
 
いただきますはどうした朝飯食わして貰っといて挨拶もねーのか。
そう言うと土方君が口を開いて何かしゃべろうとした。
あーもういいよ。食ってから言っても遅いから。犬が骨くうみてぇにひたすらしゃぶってろ。
 
 
七日目A
 
ぴちゃぴちゃ、ぬれた音が俺の言葉に答えた。
ああ,あの可愛い口ン中俺のがはいってる舌が俺の嘗め回してる。俺はしびれる満足感を目を閉じて味わった。
下から上にソフトクリームみたいに舐めている。土方クンが。
落ち着いて考えてみれば動きは舐めあげるだけの単調な動きでおぼつかないものだったが俺は土方クンの必死な顔を見てるだけでイきそうだった。
あんまり上手でも、それは俺以外の男にもこんなことしたってことだから嬉しくないしね。
良い子だ、可愛いなぁ。そう思って土方クンの後頭部を撫でた。
俺はどうしたって興奮がおさまらなくて先走りがどくどくと土方クンの口の中に流れると、苦虫を噛み潰したような表情をされた。俺も口の中が苦かった。興奮物質が大量に出るとそうなるっていうよね。
 
なぁにその顔。もっと美味そうに食えよ。ねぇどうなの?美味しい?まさかまずいの?どっち?
 
そう言って視線を股間におろしてみた。もしかして土方くんも興奮してんのかなって思ったけど足の狭間のアレは異常ナシだったんですげぇ落胆した。早く俺のしゃぶるだけで興奮しちゃういけない子になってほしかったのになぁ。
土方クンが返事をしようとして口を、ひらいた瞬間。
 
歯ァ立ててんじゃねぇよ!
 
そう言ってみぞおちにこぶしを叩き込んだ。だって何て言おうとしたかわからないけどとにかく俺のンに歯があたったんだからお仕置き。敏感なトコなんだからさぁ気を使って欲しいよね。ま、これからのこともあるしちょっときつめにしておいただけのことだ。
土方くんがふ、っと吐き出すようなしぐさを見せた。もちろん俺はそんなこと許さないので撫でていた手に力を入れて腰に引き寄せてもっと深くくわえ込ませた。土方クンの形のいい鼻の先が俺の陰毛に触れている。
 
今まさか吐き出そうとしてなかった?違うよなぁ、ああ?
 
口内を俺のでいっぱいにされて喉で空気がつまってぐぐ、という音が土方くんから漏れている。おそらく手を離せば咳き込みだすだろう。体がびくんと上下に揺れ出し耳まで真っ赤になった。
 
本気でやれよ。動きが単調なんだよ、馬鹿の一つ覚えじゃねぇんだから。しゃぶり上手なのは下の口だけか?
 
そう言いながらがつんがつん腰をぶつけて出し入れした。土方クンが体ごと揺れる。
 
右手使え。自由にしてやってるだろ。あと舌の先で裏筋舐めろ。…早く。
 
 
俺はお願い、じゃなくて命令を下した。だってこのままイってもいいけどテクを教え込まないとね。
土方クンは素直に右手で手のひら全体を使って俺の袋をもみ扱いて裏筋を舌で辿った。ぞくぞくした。
 
出来るんじゃねぇか。
 
余裕ぶってそんなことを言ったけど内心絶頂に導かれて気ィ失いそうだった。冷静にみてみりゃ俺が余裕がないのなんて息乱してるので丸わかりなんだけど、土方クンは俺の舐めるのに夢中だったので気付かなかっただろう。
そのうち土方クンが一瞬動きを止めた。俺の亀頭が頭もたげて振り出したから俺がイくのがわかったんだろう。くく、口ン中で暴れているのを俺も感じるよ。
その刹那、頭ン中で真っ白いものが弾けて目の前が暗くなった。くらくらしてめまいがする。液体ぶちまけて俺はイった。背筋がびりっと痺れる。思わず背中を後ろにそらして感嘆のため息。
そして土方くんの後ろ髪をひっぱって俺のを抜き、全部飲めと命令した。上を仰ぎながら苦しそうに喘ぐ姿を見ながら俺の口は止まらなかった。興奮で早口になったが言いたいことがぽんぽんと浮かんだ。
 
飲め。口ン端からこぼれてるぞ。一滴もこぼすな。ほら唇舐めろ。全部飲むんだ。俺が出したもんだぞ。俺のだ。お前が出させたんだろ?俺は恋人だろ。美味いよなぁ、もっと飲みたいよな。はきつけたら容赦しねーぞ。あの写真と近藤ゴリラの首飛ばして屯所に飾ってやる。俺がそれ位出来るって知ってるよな。
 
ごくりと土方クンの喉が上下して飲み下していくのがわかると俺はまたぞくっとした。
 
下の口に飲ませても結局全部出ちまうんだけどこっちはちゃんと消化されるんだよなぁ、たまんないね。俺のんが中はいってんだぞ、わかってる?あはは。
さっきは奥までくわえてくんなかったけどさ、喉の奥ってどうなってるかしってるかなぁ。細くなっていっててさぁ、でもある程度広がるんだ。でね、飲み屋で聞いた話なんだけどさ…あ、長谷川さんって知ってる?マダオ。昔は幕府の高官だったらしいけどもうただのおっさんだからしらないかなぁ。その人が言ってたんだけど、喉の奥って女性のアソコにちょっとにてるんだって。ビックリでしょ?でもさぁさっきマジ気持ちよかった。ほんとかも知れないしちょっと試してみよーか。
 
その後は土方クンの口にまた無理やりねじこんで喉の奥で擦って出した。あんまりに興奮しすぎて土方クンが酸欠で気絶していたことに気付いたのはイったあとだった。
 
いけない。もっと大事にしてあげなきゃ。俺の大事な恋人なのに。
 
ごめんね、今日はもう来ない。明日はお風呂に入ろうね。優しくするよ。
 
ところで長谷川さんの話だけど、あの話本当だった。確かに近い感覚はあるね、絡み付いてくる感じとかはないけど。
まぁ何だ、何にしろ土方クンの下の口にはかなわないね。今度会ったら教えてあげよう。
あんたも一回オトコとヤってみろよって言ってあげようかな。
 
 
八日目:前
 
 
 
今日は土方クンをお風呂に入れてあげる。もう垢がたまってるはずだし汗も精液も流したいはずだ。
どーやって追い出そうかと思っていたらガキども二人が映画に行って来ると言い出した。タイミングばっちり。あんまりこっちから追い出すと不審に思われてしまう。
となりのペドロ2を見に行くんですよ、と新八に嬉しそうに言われてああそれ、俺も見た。
そう言い返して思い出した。そういや、土方クンが泣きながら一人で映画見てたっけ。
面白かったですよねえ、と言われて俺は言葉につまってああそうだなと適当に返した。本当は内容なんか覚えていなかった。あの時、俺土方クンのことつけてたんだ。定食屋でたまたま一緒になって俺飛び上がるくらい嬉しくて、でも一緒に食べないかなんていい出せなくていつも通り喧嘩して、気になってこそこそ後ろつけていったんだ。映画館の中でも後ろからずっと土クンのこと見てた。後姿だけでも見れて幸せだった。今じゃ正面から余すことなく見れるわけだけど、あんときは髪の先っぽ見えるだけでドキドキしたなぁ。
そういえば見ながら土方クン、泣いてた。あの部屋に閉じ込めてから何回も泣かせたけど、あんな辛そうじゃなくて目ェきらきらさせて泣いてた。あの顔また見たいな。今度二人で見に行こうかなぁ。
 
新八と神楽を見送って、というより去ったかどうかちゃんと確めたあとは駆け足で土方クンの元へ。
 
ぐったりとした土方クンが視線だけこちらにやった。
手錠のあとがあざになってるし、肌が白いのはかわらないけど透明感がなくなって黄ばんできたような気さえする。
そう、本当にゴミのようなていらく。
飯を食ってないから痩せてきて筋肉が見えていたのが、だんだんと骨筋が浮くようだ。
これは全部俺がやったことなんだけど可哀想に思えてとりあえず朝ご飯をあげた。
土方クンは抵抗しなかった。今度は抵抗する意思すらなかったと思う。後ろ髪をひっつかんで自分で腰を動かしてやった。抵抗しないのはいいけど、諦めたって感じだった。
喉の奥に精液を出して一滴残らず飲んだのを確認すると俺は頭から手を離した。
 
朝飯しか食わないんだね。
 
土方クンの傍らにあるのは俺が置いていった手もつけられていない弁当が6つ並んで、もう六食も喰い損ねてるんだとわかった。きた日にち×二食分。いや、最初のほうは犯すのに必死で飯のことなんか考えてなかったからそれより少ない。これじゃ体力もたないよな、そりゃ。
 
餓死しちゃうよ。
 
そういうと土方クンはうっすら口の端で笑った。ああ、そうだな、と言った声が自棄じみていて俺は悲しくなったよ。
死ぬなんて有り得ない。許さない。どうしたって阻止しなくっちゃ。
 
十四朗、死なないでよ。お願い。昨日はごめんね。
 
下から見上げて甘えた声を出すと土方クンは困ったような顔をしていた。
どうしたらいいのか、まぁわかんないよね。
昨日は無理やりフェラさせといて今日はこんなに優しいんだもんね。
俺は本当はいつでも優しくしたいんだよ。でも自分の中の獣な部分とか性欲とか苛立ちとかおさえられなくて暴走してしまう。いわばさ、土方くんを目の前にすると別人格へのスイッチが入っちゃうんだよ。
でも今日はそれをおさえなきゃ。
土方クンが暴れなければ俺も大人しくしている。
俺が優しくさえすれば土方クンも暴れたりしないはずだ。土方クンは俺に乱暴されるから暴れるだけで、本当は俺のことを大好きなんだもんね。
 
今日はお風呂はいろっか。
 
出来るだけ優しい笑顔で俺はそういった。
 
ごめんね、体洗いたいでしょ。今日は新八と神楽映画見に行ったんだ。だからゆっくり湯船漬かれるよ。
 
土方クンのかわいた精液がこびりついた前髪を撫でながら俺は濡れないようにズボンの裾をめくって土方クンの手錠を外して抱き上げた。
お姫様抱っこってやつ。悪者に拉致監禁されたお姫様を助け出した王子様みたいな気分になった。実質はその悪者ってのが俺だったわけだけど。
抱き上げてから土方クンの体が軽いことに気付いた。背丈は俺と同じ位だし前サウナで見たときは体つきだって俺と同じくらいだったはずだ。体重が落ちてることを両腕の重みで実感した。
完全な栄養不足。やせ衰えている。
閉じた瞼が落ち窪んでいるように見えて痛々しくて、俺は指先で土方クンの視界を閉ざした。
それにここかどこか知られたくないし。目を俺の手のひらで隠すと真っ白な肌ン中に柔らかそうな赤い唇が目立って、たまんなくなって俺はキスをした。
 
 
俺がちゃんと背中洗ったげるよ。なんか俺も入りたくなってきたなー一緒にはいろっか?俺の背中流してよ。よし決ーめた。俺がシャンプーしてストレートになってるとこ見れるよ。俺天パじゃなかったら超イイ男だもん、十四朗きっと俺にホレなおすよ。
 
 
半分俺が覆ってるから表情はよくわかんなかったけど、口元があっけにとられた感じでぽかんとあいてたからまぁ、まだわけわかんねーって表情浮かべてるんだと思う。昨日はご主人様みたいな態度だったのに今日は恋人って感じだもんね。今日は優しいでしょ?
学んでよ。土方クンが暴れなければ、俺に優しくしてくれれば。俺も優しくなるってことを。
 
 
誰かと一緒に入るってったら久しぶりだなぁ。昔はさ、桂とかと一緒に入ってたんだよ。もう20年は前のことだけどね。俺もほんとオッサンになったなぁ。そーいやぁ俺高杉とも入ったことあんの。十四朗知ってるだろ?たかすぎしんすけ。過激派とかで有名らしいけど昔はさぁ風呂場で坂本ってやつにさんざん悪戯されて泣いてるようなやつだったんだよ。まぁた、坂本ってやつが昔から高杉のこと大好きでね。しょっちゅう泣いてた。あはは、坂本も好きな子苛めるなんてガキだよなぁ。まぁ今では坂本と高杉ラブラブらしいけど。あの二人どんなデートするんだろうね。高杉がデートなんて想像出来ないよ。
 
俺は喋り続けた。視覚もきかないのに声もしないんじゃ可哀想だと思ったから。俺は上機嫌でけらけら笑いながら喋ってたけど土方クンは笑い声も相槌も返してくれなかった。まぁ、そうかな。高杉のことなんか聞かされたって楽しくなんか、ないか。知らない野郎のことだもん、もう真撰組でもないもんね。
 
脱衣所に着いて土方クンを床におろして瞼をおおってた手のひらもどけてやると土方クンは光がまぶしいのか目をぱちぱちさせてた。
手早く着ているものを全部ぬいで部屋においてある籠に放り込み素っ裸になって、よろける土方クンを腕で抱えて立たせた。
 
十四朗。
 
甘く呼びかける。自分の額を土方クンのおでこにぶつけて甘えた素振りをした。両腕を土方くんの腕にまわして、それからおでこにキス。下にさがって首筋にキス。体を下へとずらして、今度は肩をもって胸にキス。次に臍。膝をおって地面につけ、唇をつけたままつぅっと下に移動して下腹まで降り、すっかり細くなった腰を両手で掴んだ。
綺麗な体。俺のもの。
 
十四朗は俺の宝物だよ。
 
そう言って土方くんの下腹に頬擦りをした。
 
 
八日目:中(いつもと違ってヌルいです)
 
俺はいつもシャンプーしかしないんだけど、その日は神楽の使ってるリンスを勝手に使わせてもらった。いい香りがして、あいつもやっぱり女の子だなと俺は思った。
でもそのいい香りのリンスで髪をすすいであげたその相手は女の子じゃない。俺の、恋人。
体も洗ってあげた。前も後ろも。敏感なとこを丁寧に洗ってあげるとしっかり反応してくれた。
別にやらしいことばっか考えてそうしたわけじゃない。だって俺がよくいじる場所なわけだし清潔にしておかないとね。
 
一度イかしたあとに風呂場の浴槽の淵に手をかけ、足をのばして上に土方くんをのっけた。久々の湯船で土方くんは気持ちよさそうな顔をしていて、俺も自然と気持ちが緩んだ。
 
「映画さ、二人で見に行くってことは神楽と新八っていい感じだと思わね?もしかしてもう付き合ってんのかもなーだったら俺邪魔者になっちまうよ、ここは俺ン家だっつーの」
 
どうせ答えてくんないんだろうな、と思いながら言ってみたら。
 
「そのうち、結婚して出ていっちまうんじゃねぇの」
 
…土方クンが、そう言った。抑揚とか感情のない、冷めた声だったけど。
俺のくだらねぇ雑談に返事を返した。一瞬びっくりして思考が停止した。殴っても何しても答えなかったのにこんな軽口を、叩くなんて。
 
「…神楽が結婚できる年になるのにあと五年はかかるよ。あーあいつらとあと五年は一緒なのかと思ったら鬱陶しいかも。新八も大変だよな、神楽の親父すっげぇ恐いんだよ。見てたろ?あのターミナルでの暴れっぷり。親子揃って化けもんだよな。いやでも、ほんとあいつ等出ていくかも。そしたらさ。」
 
俺は嬉しかった。
土方クンとやっと話せてうきうきして後ろからぎゅうっと抱きしめた。一回り俺より小さい背中をすっぽりと覆いこんで、土方クンの、なで肩の上に俺の顎を置いた。
 
「二人で暮らせるな」
 
自分で言っててはずかしかった。なんか、婚約済みのカップルみたいだったから。
 
「ああ」
 
土方クンが笑ってくれた気がした。顔は見えなかったけど。
俺は首を傾けて土方くんの首筋にキスをした。いい匂いがした。神楽のリンスだけじゃなくて、生の土方クンの、香り。
 
「はは…二人で暮らすの待ち遠しいなー。俺ちゃんと仕事する。マジで。もし仕事なかったら日雇いでもバイトする。何でもしてちゃんと養うから。どんだけ疲れたってさ、十四朗が待っててくれんだもんな。俺料理も出来るんだけど洗濯とか片付けとかダメでさ、十四朗にお願いするよそこは。うち今新八が出ていったらゴミ屋敷になっちまう。…あ、さっき料理できるって言ったけどやっぱ嘘ってことにしといてくれ。十四朗の作ったもん食べたいな」
 
頬を摺り寄せながらそう言った。いっそ今からでも神楽と新八を追い出しちまおうかとすら思った。嬉しくて、嬉しくて。
 
「外でデートもしような。映画見たりさぁ。あ、あの日覚えてるか?定食屋で会ってさぁ、最後健康ランドとかで喧嘩したの。俺楽しかったなーまた行きてぇな。ペドロで泣いてる十四朗可愛かったよ。そうだ、今2公開中なんだ。今度見に行こう。新八と神楽ならさぁ、あいつらお妙になついてるから歌舞伎町にほうっときゃいいんだ心配しなくていいからさ」
「ばか言うなよ。何だかんだ言ってあのガキども、お前になついてるさ。しょっちゅう追っ払ったら臍曲げるぞ」
「大丈夫だよ。この間だってさ、言ったっけ?あいつ等お妙とかと三人で旅行いったし。確かにあんま追い出すと不審がられるかもしんないけど」
「そもそも眼鏡小僧と、チャイナ娘は住み込みで雇ってんだろ、仕事してねぇのかよ」
「仕事は三人でしてたけど最近あいつ等俺のこと舐めてんだよ。家事は新八で神楽は遊びに行って俺が仕事してる。神楽もサダハルももりもり食うしさ、神楽ももうちっと働いて欲しいよな」
「…そーか、二人とも基本は家にいるんだな」
「そうだよ。…ねぇ十四朗。神楽までとは言わないけど、お前はもっと食べなきゃダメだよ」
肩と背中が骨ばっている。顎に浮き出た骨がごつごつあたって、俺はまた心配になった。
「ああ、悪い…」
「体壊しちまうだろ。な?」
「ああ…食欲無くてな。…でも、アレ喰いてぇな」
「食いたいもんあるの?なに。何でも買ってくるよ、十四朗が食べたいなら」
土方くんがねだってくれるのも、話しかけてくれるのも。二人でお風呂はいってられるのも。
もうほんと、嬉しい。夢見てるみたいだった。
「どこだったかな。ほら、歌舞伎町のどこだかの料亭が売り出した弁当、それが美味そうだった」
「へぇ、どこらへん?」
「歌舞伎町つったって治安のいいとこだったかな。ああ、でもいつも長蛇の列が出来てるって聞いた気がする」
「そんなのかまわねーよ。俺が並んで買ってくるからさ」
「名前なんだっけな・・」
「俺歌舞伎町知り合い結構いるから大丈夫だよ、てきとーに聞きまわってりゃわかるさ」
「でも限定発売で…えーと六時からだったかな…そんですぐ売れきれちまうって話で」
「いいよ、だいじょーぶ。二時間くらい前から並んどきゃ買えるだろ」
「…いいのかよ。値段俺しらねーぞ。すげぇ高いかも」
「値段なんか気にしねーよ、絶対買ってくる。…だから二人で食べような、十四朗」
「なんだ、ガキどもにはねぇのか」
「いきなりそんな弁当買ってきたら変に思われるからな。それに」
「ン?」
「俺が尽くしてやるのは十四朗だけだよ」
「…保護者失格だ」
「それはどうでもいい。十四朗の恋人としては最高だろ」
「ああ、そうだな」
笑いながら、土方くんが俺の脚の上で座りなおした。
そのとき、ちょうど腰がぶつかって。
「…ッ!!」
俺は思わずうめき声をあげた。ちくしょう、このまま甘い雰囲気を味わいたかったのに息子が反応しだしやがった。でも、だって仕方ない。俺の足の付け根のほうに尻が当たったんだから。
そういや土方クン、長風呂のせいか汗をかいて、肌が蒸気して潤んできている。
そんな姿見て俺が我慢できるはずもなかった。
目の前の首筋にまたキスを、した。
 
 
八日目:後@
 
「んっ」
くすぐったそうな短い声が漏れて肩が震える。
「なに盛ってんだよ、風呂に来てまで」
振り向いた土方クンの顔は笑っていた。
「だってさぁ、今当たったんだ。やばいもうこれ…無理」
「風呂場でするわけにいかねぇだろ。するならせめてあがってからにすりゃいいじゃねぇか」
あがってからならしてもいいよ、って意味にとれて、俺は嬉しかったのだけど。
「我慢出来ねぇって…」
我ながら情けない声を出して、土方クンに擦り寄った。
「おい。足に当たってる」
「やっぱ当たっちゃってたか。俺のもぉおっきくなってるのわかるだろ。オトコは急に止まれないじゃん。許してよ。ストレートの俺に惚れ直しただろ?それに免じて」
「風呂場は、よせって」
「水中なら体軽くて楽じゃねぇ?」
「馬鹿言うな。浴槽狭いから痛いんだよ」
「体勢変えずにこのまますればいいじゃん。ね。手加減できるかどうかわかんねーけどおさえてみるから。今とめらんねー…」
「んじゃ手でヌいてやるから」
「十四朗ン中はいりてぇんだよ。だってさっきこすれたんだぜ。自分ン中がどんだけ気持ちいいかしらねーだろ?柔らかい肉が締め付けてぴったりひっつくんだよ。最後はさぁ俺の出したもんでトロトロになってそれがまたイイんだ」
言いながら、俺は土方クンの中でイったのを思い出してうっとりした。だけど。
「痛いんだよ…」
女だって、あんなモノ…って俺のものなわけだが…いれられるとひどく痛がる。勢いに任せてつっこんでるんだから。土方クンにいたっては元々受け入れるための器官じゃない部分にねじ込んでいるわけで、痛くないはずがなかった。
ああ、俺は何もわかってなかった。
そりゃ毎日何回も突っ込まれて中ですられたら、たまったもんじゃないよな。
ごめん。
でも我慢できないんだよ。
「それじゃ…慣らしてあげるから。ね?」
「ん…」
「お願い」
「…条件がある」
「何?」
「今日はこれで終いにしてくれ。せっかく風呂はいったんだからしばらく綺麗でいてぇんだよ」
それも当然の話だ。
俺は自分勝手に中だしして指でかきだしてそのままでいた。放置されてどんなめな、気持ちだったろう。
「そっか…」
「それならしてもいい」
「・・・・今までべとべとして気持ち悪かったろ。ごめんな」
「ああ」
「許してくれるか?」
「ああ」
「怒ってない?」
「怒ってねーよ」
「ほんとに?」
「ほんとだって」
俺は救われたような気持ちになった。
許されて、俺は愛されたような気分になった。
「…とーしろ…」
名前を呼びながら息があがっていった。興奮ではぁはぁ、俺は肩で息をしている。
俺を早く中にいれてよ。いや、いれたいっていうよりも、はいりたい。下から突き上げて体を二人でゆらしていればそこがくっついて融合したようなあの気分を。
俺が土方クンを手にしたことを教えてくれるあの熱を。締め付けてくるあの快感を。俺が。土方クンを。
俺は。
ずーっと大好きだった土方クンの恋人になったんだ…。
愛しくて付回して監禁するまで欲しいと願った土方クンの。
恋人に。
 
 
俺は。
 
 
愛し合ってる。
 
 
「ァ…」
指を一本粘膜に差し込むと小さな声が漏れた。
可愛い。
「痛い?」
ゆっくりと中で指をおると背中がしなった。
「大丈、夫、だ」
「二本いれていい?」
返事にこくんと形のいい頭が揺られたと同時に指を一気に、いれると。
「ァああ!」
「…ちょっと早かったな。でも我慢できねーんだよ…」
「痛ァっ…」
「ほら。息はいて。楽にして」
「おま・・っ二本、てっ…」
「俺が聞いたのは二本目いれていいかってことじゃなくてあと二本いれていいかってことだ」
「っんなのっ…あっく…」
批判をしようとしたのだろうけど、指を第二間接で折り曲げてばらばらにかきまわしてやると言葉は消えた。
「水…っいやだ…」
「ああ。入ってくるんだ」
じゅぷじゅぷ言ってるのは粘液のせいだけじゃない。
「熱い…ぁァ…も…」
「いいじゃん。せっかくだからここも洗ってあげる」
「ひィ…ァ、するな…っ」
ぴくん、と腕の中で体がはねた。
「ここよく使ってるじゃん、一番洗わなきゃいけねーとこじゃん」
指で、中の両壁を押して、穴を広げてやると水が大量に入ってくるのがわかった。
「ぁあ!!やめ…あついぃっ…ァぅ!」
「水のせいかなぁいつもより柔らかいね」
「もうやめ…ァあ…熱い熱い熱いっ…奥、まで、入って…っ」
熱のせいでのたうちまわってる土方クンを見て俺は舌なめずりしたい、気分。
「気持ちイイ?だいぶ緩んできたよね…?」
「ァ…ああ…もぉ・・いいからぁっ・・・」
「ン?」
「慣らさなくていいっ」
指の動きを、止めた。
興奮して心臓が、止まらない.
 
 
 
八日目後A
 
「はぁーっ…う…はっ…」
ずぷずぷと、飲み込ませる。
出来るだけ、ゆっくりと。
一緒に水が入っていくのが俺には心地よかった。
しっかりと根元まで結合させるのを感じるとさらに土方クンの腰を押さえつけた。
「ゥあっぁあっ!」
「ほら・・・わかる?俺の全部入ってるだろ。きつくて気持ちいーなぁ」
囁きながらがつん、と腰を掴んだまま大きくひいて、奥を突いた。
「ィあっ!!」
「いい声だなー…きもちいーんだな」
早くも土方クンの声に艶があるのに俺は満足した。
後ろの穴いじられただけで興奮出来る男に俺が改造したわけだから。
細かく腰を突き上げると小さな渦が出来て湯船の水がこぼれて跳ね回った。
「熱い…あつ…っ」
「中に湯はいったまんまなの?俺がかき回してやるよ」
「やぁっ違…ぎん…ぁあっあつ…!」
うわごとのように熱い、と繰り返した。その様子が浮かされたように見えて、俺はその原因がお湯じゃないとわかった。
「ああ。熱い、って俺の?興奮しきってるし風呂はいって体温あがってるもんね」
抱きしめている土方クンの体も熱があがっている。
足を広げていないからアナルがきゅっとしまって、いつもより突き上げるごとにぴったりと吸付くように締め付けていた。
「も、ァ…痛い…あつっ…」
それだけに結合部分の痛みもあるだろうし、狭い場所だからあちこちぶつかってしまうだろう。突き上げるときの出してイれるその瞬間水が中に入り込んでいく。
ちょっとだけでもそれを和らげてやろうと、土方クンの前に手を回して
胸のかざりを撫でてあげた。そこはもうたちあがって硬い感触を伝えてくる。水にぬれてさらにいやらしく見えた。
「ぅあっ!…ちょっ…これ以上でっかくすんなぁっ」
「ごめん」
ぐいぐい腰を押し込んでなおも攻め立てると土方クンの背中が骨が軋んだ音がするように思えるほどにしなった。中があつくて締め付けてきて、奥のほうが数の子みたいにぼこぼこしているのがたまらなくて夢中になった。
突き上げるたびに規則的に声があがる。それにあわせて腰も揺れるようになった。
「あっ、あっ、あっ、あ」
いったん全て引き抜いて腰を浮かせるとぱっくりとわれたそこに水が入り込んだ。そこに打ち付けるように一気に打ち込む。
「_____ァあああぁあぁぁあぁ!」
土方クンが叫んでぴぃん、と足先をのばして一瞬硬直する。愛しくなって痙攣する下腹を抱いてあげた。
「ヤ…ァああ…はぁっ」
泣いてしまうかもしれない。土方くんの目頭が赤くなっていた。
「息、はいて。深呼吸してよ」
「ん…ァああ…っ」
後ろにエビのようにそって俺の肩に土方クンの綺麗な髪が擦り付けられた。慰めるように、しなやかな髪にキスを落とした。
大きく息をすって肩が上下する。俺の熱くてたまらなくて、少しでも熱を逃がそうと耳に息を吹きかけてやると小さな甘い声が聞こえた。
「突くと痛いだろ?」
「…ああ…」
「だからもうやめてやるよ」
「ひぅっ・・・ひゃあぁああぁっ」
その代わり、と言って土方クンの腰を強く押さえつけて固定したあとぐりぐり中をかき回すように腰を浴槽の淵ですべらして揺らした。しばらくそうしているうちに俺のが固いしこりのような、クルミ大の大きさの何か固まりにあたった。
「んあっ!!」
全身びくんと動いて一際大きな声があがった。
「ああ、これ。今日はラッキーだなぁ、いいポイントみつかったな」
何つうんだっけ、なんとか腺。精通につながってるしこりで、一言でいえば凄く気持ちいいところ。
…なんだが、これが小さく奥のほうにあるのですぐ見つからない。土方クンが気持ちよくなるためにはこれが重要ポイントなのだけど毎回みつけるのは難しかった。
「俺のがいつもよりデカイから見つかったのかな。なぁ?これで十四朗も最高に気持ちよくなんじゃん」
「は…っ」
きゅっとしめられた内股の狭間で早くも土方クンのアレは立ち上がって竿をふっている。
「気持ちいいんだろ」
震える先端を撫でてやると手の中でそれが暴れだした。
ポイントばかり狙って先端でしこりを押すと全身を痙攣させて十四朗があまりの快楽に暴れまわった。
「ぅああぁあぁっひぃっぁっぁっいやぁっ」
首を左右にぶんぶんふって身をよじって快楽から逃げようとする。
止まらない先走りの粘液が湯にまじって消えた。
「とーしろ、一緒に、イこ」
突き上げながら俺も限界で、舌も上手く回らない。
こんなことを思ったのは初めてかもしれないと俺は思った。今まで俺が一方的にイってばかりで、土方クンと同時にイこうと思ったのも、そうするのも初めてだ。
「とうしろ…俺の名前呼んで」
頬を擦り付けてねだる。
 
俺の目の前が白くはじけて、イった。
 
「ぎん、ときぃっ」
高くてかすれた声が聞こえて湯の中で白いものが浮かぶ。土方クンがイったのを確めて俺は抱きしめながら、幸せすぎて胸がきゅうんと締め付けられるような思いだった。
「十四朗愛してる…大好きだよ…」
ぎゅう、ってすると土方クンが目を閉じた。
幸せ。
大好き。
 
 
 
九日目
 
朝起きると幸せな気持ちだった。
布団の中で昨日の風呂でのことを思い出して思わず、土方クンのかわりに布団を抱きしめた。
あんな素直な土方君初めて見たなぁ。俺と話してくれたしお風呂も入ってくれたしおねだりもしてくれたし、してもいいよって言ってくれたし。
ぎんときって言いながらイってさ、もうほんと可愛かった。
風呂から出たあともいちゃいちゃしてキスしまくって。もう今唇はれてるかもしんない。キスしたら抱きしめ返してくれたの、忘れねーよ。
俺は優しくした。可哀想だったから手錠もはずして(ドアの鍵はもちろん忘れないけど)、そしたら青痣がのこってる手首が見えた。謝ったら許してくれて安心したよ。
時間を忘れてごろごろしてたらもう何時間もたってて焦った。離れたくなかったけど仕方なくさよならの濃厚なキスをしてあわてて下降りたらもう二人ともかえってて、どこ行ってたんだって問い詰められて言葉につまっちまった。屋根の修理だよって適当にごまかしたら「ああ、最近雨漏り酷いですもんね」と納得してくれたから良かったものの。
そのあと匂いがする上に精液がまじってとろみを帯びてしまった風呂場の水を急いでぬいて入れなおした。あーほんと、ピンチだったけど。
でも、最高の一日だった。
 
満足感にしばらく浸ったあと、俺はふと不安になった。
 
もしかしてあれは良い夢だったのかもしれない。
 
急に土方クンが俺と話してくれるなんて。俺の名前、呼んでくれるなんて。
そう思い始めるとその考えは止まらなくて、あんまりに土方君が素直じゃないから願望が夢になったような気がしていた。
何度も触ったし抱いた体の感触も肌の滑らかさも体温も指先が覚えてる。それが生々しく夢ン中で再現されたのかも、しれない。
焦った俺は急いで土方君の元へ行った。
 
「とーしろっ!」
ぐったりしたまま動かないがいたら堪えられないと思った。だが扉をあけるとそこには。
「どーした?何焦ってんだよ」
そう言って笑っている土方くんがいた。
俺は涙が出そうになった。夢じゃなかったんだ、昨日のは現実だったんだ。俺はずーっと思いえがいてた理想が手に入ったんだ。
駆け寄ってぎゅっと抱きしめると戸惑いながらも、土方くんは抱き返してくれた。
「心配になったんだ。昨日優しくしてくれたの幸せすぎて、もしかして嘘か幻かもって思って」
犬みたいに頭を摺り寄せると、
「俺も、思ったよ」
あやすように土方くんが背中を撫でてくれた。
「俺、昨日優しかっただろ。十四朗が優しくしてくれたからだ。俺と話してくれたからだ。今まで話し掛けても全然しゃべってくれなくて悲しかったんだぜ」
そんとき目の端に土方君の体にある痣が見えた。皮膚の下の内出血が青黒く晴れ上がっている。俺は嫌な気持ちになった。
「…殴ったりしてごめんな。もうしねえよ。約束する、武士の誇りにでも何にでもかけて誓う。大事にする。…だから俺に優しくしてくれよ。な。ごめんな」
言いながら、母さんなんていたことはなかったが、母親に抱かれた子供になった気分だった。大好きな恋人の腕の中で胸に頬を擦り寄せて甘えて、頭がとろけそう。
「ああ」
優しく土方君が笑ってくれて天にも昇る気持ちになった。うっとりして、目を閉じていると唇に柔らかいものが、触れた。
驚いて目を見開くと視界いっぱいに土方君がいて、一瞬何が何かわからなかった。
しばらく考えて、自分と土方君の唇が触れ合っているのだと。キスを土方君からしかけられたのだとわかった瞬間に。
たまらなくなった。
無我夢中になって、もっときつく抱きよせた。窒息死するかもしれない。そう思ったが、それでも良かった。
その勢いのままに舌をいれようとしたとき、そっと唇を離された。
「銀時」
もう一回キスをしようと唇を追おうとしたが、名前を呼ばれて動きがとまった。さっきから何。驚きすぎて心臓とまっちまうよ。
今までよろず屋とか銀髪とか天パしか言われてなくて、俺が頼んだ時以外はちゃんと自分から下の名前を呼んでくれたのは初めてで違和感すらあった。あれ、俺の名前銀時だっけ、とすら考えた。
「ごめんな、痛いんだ。口ン中切っちまって」
「…そっか。なら、仕方ないな。いいぜ。キスなら毎日出来るからな。初めて俺にキスしてくれたし、名前で呼んでくれたし今日は何でも許しちまうかも。うれしいよ」
キスが出来ないのは残念だけど、俺はもうそんなのどうでもよくなっちまってた。
「そっか。そんでな、頼みがあるんだ」
「ン?なに?何でも聞くよ」
「口、あんま大きくあけたりするといてぇんだ。だからさ…」
いいにくそうに言葉をきるのを見て一瞬考えたがすぐお願いの内容がわかって、俺は小さく笑った。
「あーわかった。朝飯は今日抜きたいんだね」
「ああ、そのことだ」
「へへ…うんいいよ。仕方ないもんな」
目ェ閉じて土方クンの腰に手をまわして太ももに頭をおく。髪を、土方くんが撫でてくれた。甘えたい気分だった。甘えさせてもらえて満足して、俺はもうそれでよかった。
「大丈夫?いつ出来たの、そんな傷」
「一昨日に」
「じゃあ俺がつけた傷だね」
「…そうだな」
「ごめん…もうしない」
「いいさ。口ン中は治り早いから…そうだな、三日もすりゃ消えんだろ」
「ごめん」
「いいって言ってんだろ。謝るな」
「ありがと。…ねぇ十四朗」
「ン?」
「キスして」
「さっきしただろーが」
「足りない。もぉ一回」
「いてぇんだから舌いれないでくれよ」
「わかってる。だからさ、ほら」
顔を上向けて目を閉じて唇を突き出して待つと少し間があいたあと、キスをしてくれた。
舌を、いれたくなったがそれは押さえた。触れるだけのキス。
それで構わない。愛情がじんわり胸からあふれた。
「うん…満足」
「そうかよ」
「あ、とーしろっ」
「あ?」
「ぎんとき、って言ってくれ」
「キスの次はそれか。注文が多いな」
「お願い」
「…仕方ねぇな」
「へへ」
「…銀時」
囁くように言われて俺は照れて笑った。同じように照れて笑っている土方クンがいたから、たまらずちゅ、っと短い触れるだけのキスを角度を変えて何回も啄ばんだ。
幾度も繰り返したあと唇を離して、すぐ近くにいる土方クンに笑いかける。
「十四朗」
「なに。今度は何だってんだ?」
呆れたように笑ってる。可愛い。
「呼んでみただけ」
「そうか」
頭をまた足の上においてしばらく膝まくらをして貰った。うとうと、しはじめたころにはっと思い出してとびあがる。
「あー神楽とかがおきるまでにもどらねーと。今日朝飯当番だ。ってか今日仕事だっ!あーくそ思い出した」
俺は仕事を探しはじめてた。今までは受けた仕事は選ばなかったが探すなんて面倒くさいことはしていなかったのだけど、土方くんに貧乏暮らしをさせるわけにいかない。こう見えて顔は広いため比較的すぐみつかるようになっていた。
「仕事か。珍しいな」
「それはほら、自由業だから。無い日もあるさ」
「大丈夫かよ」
「ほんとは結構稼いでんだけどなぁ。うち、よくくう娘と一匹がいるからな」
「そうかよ。…血も繋がってねーのに何でもしょいこんじまうんだなてめーは」
「別に良い人とかってんじゃないぜ。俺はずっと家族とか知らなくてさ、ほしかったから。俺達身を寄せ合ってんだ。神楽も色々あって一人だし新八も両親しんじまって姉貴は夜仕事だしよ。淋しい同士だから、っていうかさ。俺が兄貴分なとこもあるし、新八もお袋みたいになってきてる。お互いで家族の穴を埋めあってる擬似家族だよ」
「…家族か…」
土方クンは少し考え込むような顔をしていた。どうしたのかな。俺のこと可哀想になったのかな。
「でももういいかもな。俺には十四朗がいるから」
土方くんのためなら本当に何もかんも、捨ててもいいと思った。
「俺が家族か?」
「そうだ。俺の奥さんなってよ。ね。最近仕事ちゃんと探してるんだ。不自由させねーからさ」
「その大事な仕事に遅刻するんじゃないのかよ、プロポーズなんかしてる場合かよ」
「なんだよーひでぇなぁせっかく告白してんのに。ま、いいや」
そうして俺は土方クンの手首に目を移して。
「…手錠はしていかねーから寝転がって待ってな」
手首には痣のあとがまだ残っていて、これ以上痛めつけるきにはなれなかった。
「ああ」
「じゃ、いってきます」
頬に軽いキスをして土方くんとお別れ。
新婚の気分になった。階段をおりていくあしどりは軽い。
とーしろーとご飯食べるんだ。はは。俺にキスしてくれた。名前呼んでくれた。弁当高いんだろーけど土方くんが欲しいなら何だっていい。
買ったら喜んでくれるかな。お礼にまたキスしてくれるかも。
そう思うと顔がにやけて仕方なかった。

 
 
 
十日目(土方くんが変な方向に)
 
 
 
 
起きてそっこう土方くんの元へ。まだ口の中が痛むと思うので、おにぎりを持っていった。
「十四朗。おはよう」
差し出されたおにぎりを掴んで口にいれながら土方くんが俺を睨む。
「…はよ。まだへこんでんのか?」
昨日。
弁当買って一緒に食うのを楽しみにしてた。仕事を珍しく本気でやって片付けて、
だけど聞き込んでも歌舞伎町にそんな店あったっけ、と言われ探し回ってもみつからず、結局棒のようになった足を引きずってコンビニ弁当を買って二人で食べた。
「あーあ…」
「別にいいって言ってんじゃねぇか。俺の記憶がうろ覚えなのがわりーんだ。お前がそんなへこむことでもねぇだろう」
「十四朗が欲しいものは全部あげてぇんだよ」
「馬鹿いってんじゃねぇ」
「本気だよ。お前のお願いなら何でも叶えてやりたい」
「昨日のだって旨かったぜ」
「今日は絶対買ってくる」
「無理すんな」
「無理じゃない。今日な、夜に仕事はいってんだ。だからちょっと早めに出て買うから。さめちまうけど温めるからそこは勘弁な」
「…ばぁか。そこまでムキになるかよ普通。…ほら」
照れたように笑って、土方クンが俺に顔を近づけた、と思ったら次の瞬間ほっぺにキスをされていた。
「これで機嫌なおせよ」
信じられなくって、殴られた女の子みたいに頬に手をそえてみる。暖かい。
俺は真っ赤に違いなかった。鏡で見たらゆで蛸みたいに、なってんだろう。
「なぁ、今日はその…朝飯当番なのかよ」
土方クンが上目遣いで見てくる。俺の心臓は爆発寸前だった。
「違う…けど…」
「仕事、夜からなんだよな?」
「うん」
ぴったり、寄り添うようにして体をくっつけてきた土方くんがコテン、と俺の肩に頭を預けた。
どくどく、と自分の心臓の音が聞こえた。
「…昨日はびっくりしてたんだぜ。すぐ仕事だ朝飯だとか言っていっちまうし、帰って来るのは遅いし」
「う…うん」
「ガキどもは従業員なんだろ?何でお前まで雑用してんだよ」
「何か、いつの間にかそういう流れになってて」
「雑用なんかあのチャイナとメガネに任せてここにいりゃいいじゃねぇか」
「とーしろ…」
幸せすぎる展開に戸惑っていると土方クンの両腕が絡みついてきた。
「やっぱ、ダメなのかよ。あんまり部屋これねえじゃねぇか」
「もしかしてさ…十四郎寂しいの?」
そうだと言って欲しいなと思いながら聞いてみると素直にこくりと土方君が頷いた。
「寂しいさ。俺は一人でずっとおまえの帰りを待ってんだぜ…」
俺の肩で土方くんの頭が揺れる。そのせつない声が俺の心を掴んだ。
「そっか。わかった。そうだよな…この部屋から出れねぇしすることもねぇもん不安だよな。ごめんな。これから俺も出来るだけこの部屋来るから。一人にしたりしないよ、もう寂しくさせねえ」
可哀想になって、力強く肩を抱き返した。
細い肩だ。いや、元々は剣を扱う警察官だったんだ、ある程度がっちりしてたはずだがやつれてしまった。
 
俺が、守ってやらなきゃ。
 
「なぁ、どんな仕事してんだよ」
「今日は大工の手伝いだけどいつもはまぁ…飼い猫探して下さいとかさ」
「そんなんばっかりか?」
「最近は十四朗のためだしちゃんとしてるって。もっとでけぇ仕事だってある」
「そうじゃねぇ。また春雨とかに関わったりしてねぇのか?」
ああ、俺のこと、心配してくれてるんだ。
胸ン中があったかくなった。
「そんな危ない真似してねえよ」
「でも危ない仕事もあるんだろ…」
「だぃいじょーぶ。そんな心配すんなよ、俺はおまえを置いて死んだりしないよ」
「わかんねーだろ」
「こんな可愛い恋人置いてあの世へなんか行けねーよ」
肩に腕を回して抱き寄せて、髪を撫でてあげた。
離れてたまるか。
「おまえ俺がどんな気持ちかわかるかよ。次いつ来てくれるかわかんねーし、連絡一つもねーし」
拗ねたような口調で言われたのがとても可愛かった。
実のところ子供、というかがきっぽい仕草が大嫌いな俺は歴代の彼女にだってこんなまねされたら少々いらっと来ていたのに土方クンには全くそんなことはなかった。
最近可愛いこと言ってくれる。
そうだよな、俺に会いたいよな。心配だよな。連絡少しくらい、欲しいよな。
「危ない仕事に巻き込まれてたって俺はわかんねーんだぞ。それで、もしお前が病院送りになってたって俺はついていけないし、次の日もその次の日もずーっとお前が訪れてくれるのを待って」
「うん…そうだな…じゃ、何か考えっか」
「何かってなんだよ。うやむやにすんじゃねーぞ。俺は真剣なんだからな」
「わかってるーって。心配性だな」
そう言って笑いながら顎を傾けてキスをした。
「ばかやろ。こんなんじゃ誤魔化されねーぞ」
「はいはい。じゃそうだな、仕事終わったら電話いれることにしよーか」
「電話なんてどこにあんだよ」
「携帯持ってきてやるよ。俺が外でなきゃいけないときも電話する。ここ電波はいるはずだし」
「ほんとかよ」
「十四郎が寂しがってンのは放っとけねーかんな」
「何だよ。今まで放ってたくせに言うじゃねぇか」
「俺だってもっと会いてぇよ?我慢してたんだって」
「…なら仕事までここにいろよ」
「んー…」
ここにいたら神楽や新八に不審に思われるに違いない。
しかし。
俺だってもっとここにいたいに決まってる。
その上俺の愛する土方くんがここにいろってお願いしてるんだ。離れられるはずがない。
ガキどもがなんだ。あとで適当に言いくるめりゃいいんだ。
俺にとって一番大事なのは土方くんなんだから。
「そうだな。一緒にいようか」
「…よかった」
土方くんは幸せそうに笑ってくれた。
そこから仕事ぎりぎりの時間まで抱きしめあってキスを何度も繰り返した。
そのあとのセックスのときも前はマグロみたいだったのに声のあげ方がまるで別人。
綺麗だった。色気にやられた。
我慢できなくて正常位で一回、バックで一回したあともう一回正常位で腰がふらつくまで情熱的にした。
イれたとき震えながら腰振るわせるあの仕草とか綺麗な喘ぎ声とか、思い出しただけで熱くなってくる。
別れるときは辛かった。夜まで会えないと思うとほんとに寂しくて、今まで土方くんにこんな気持ちを味あわせていたことを真剣に後悔した。
 
十四郎、俺のことほんとに好きになってくれたんだな。
 
 
 
十一日目:前@
 
今日も俺は起きてすぐ朝飯をもって土方くんのもとへ。
今度は不安なんてない。うきうきして階段をあがりながら、明日からは一緒に寝ようかと考えた。朝起きて土方クンがいてくれるなんて最高だ。
 
昨日も土方くんのお願いはかなえてあげられなかった。
必死に駆け回って聞いた情報の結果、歌舞伎町ではなく隣町にあるらしい。
聞いた料亭名を土方くんに言うと、ああそれだったと言っていたので今日はそこに行くつもり。今度こそ買ってきてやらなきゃ。
 
でもまるっきりってわけじゃない、土方クンの昨日のお願いはかなえてあげられる。
懐に忍ばせたカラクリを撫でながら土方くんの喜ぶ顔を想像して笑いがこぼれた。
 
 
 
「はい、携帯」
青くて小さな、折りたたみ式の携帯電話をめのまえにぶらさげる。
最近の電話ってのはこうなってんだな。カメラだのなんだのついて便利だけど電話だけできればいいのでといったら機械自体はタダだった。ネットもカメラもできねえその機種を買っていく人間は少ないらしく少し変な目で見られたのを思い出した。
「ああ、わりーな」
「メルアドは作らなくていーやな、電話するからどうせメールしねぇし。メールしてたら電話したくなるしな」
「ああ」
電話をしていたら会いたくなるんだろうなと俺は思いながら土方君の肩を抱いた。自然と、俺の胸へ頭を預けてくれたので抱き込む形になって、少し照れて笑った。
「へへ。…ラブ定額なんだよ、これ」
俺は携帯を撫でながら言った。一週間以上外界に一切触れていない上、昔から仕事に終われてテレビもろくに見ていなかっただろう土方くんが怪訝な顔をして答えた。
「何だそれ?」
「恋人がさ、お互い大好きで連絡を取り合いたいけど限度越すと電話代かさんじまうだろ?だからさぁ新しく一個指定した番号と連絡取り放題ってのが出来たんだよ。ラブ定額だよ、ラブ定額。いい響きだよなぁ」
「へぇ…便利なもんだな」
土方くんは関心しながら青い塊をまるで貴重な宝石みたいに見ていた。
うれしいのかな。俺と電話できるから?唯一外界と自分を繋ぐものだから?
「いっぱい電話しような」
「ああ」
「仕事終わったらすぐ電話するよ」
「うん」
ねぇ、土方くん。ほんとに嬉しそうな顔をしてるね。
 
「真撰組に電話なんかすんなよ。俺だけに電話しろよ」
 
釘をさすように言った一言に土方君が目を見開く。え、っと戸惑いを隠せない顔でいた。
 
「なに、言ってんだよ」
その目に不安がゆらめくと同時に一瞬希望の光が見えたのを俺は見逃さなかった。
もしかして真撰組に帰れるかも、って思った?
「なぁんて、冗談だよ」
にっこり笑ってみせる。土方君は引き攣ったえみを浮かべた。
「そうだよな。俺にはお前以外電話する相手なんかいないさ」
「うん。っていうかそれ、受信専用だから」
ぴく、っと土方くんの頬の筋肉が動いた。
「かけられないからな」
それは。
逃げられないからな、と。言っているのと同じことだった。
「でも別にいいだろ。電話できるときは俺からかけるし。十四郎は俺以外に電話する相手いないんだもん必要ないよなぁ?」
「…うん…」
俺はその答えに満足して肩にまわしていた腕をおろして腰に回して引き寄せた。白い腰が揺れる。
裸体のままでいるためにぴくんと微かに揺れる動きもよくわかった。
「十四郎、俺のこと好き?」
「うん」
「じゃあ大好きって言って」
「急にンなこと言われてもよ」
「何で?…俺、十四郎のことすげぇ好き。大好き。愛してるよ」
笑いながら、土方クンが目を瞑った。それに誘い込まれるように唇を重ねて何度も味わった。
「…好きだよ」
好きだ、好きだと。
その合間に俺は、伝えきれない愛をどうしてもわかってほしくて言葉にした。どうしたらわかってもらえるだろう。
繋ぎとめてでも土方クンが欲しかったこと、土方クンが俺を愛してくれたら俺はどうしようもないくらい幸せだってこと。
ようやく唇を離したときに。
「銀時好きだ」
「十四郎…」
「俺も、好きだ」
「愛してる?」
「愛してるよ。銀時」
「近藤と俺ならどっちが好き?」
「銀時だ」
「沖田君より俺のことすき?ミントンよりは?」
「銀時が一番好きだよ」
「ありがと。でも一番なだけじゃ嫌なんだ。…俺以外のやつは嫌いになってよ。ゆるせねぇから」
「俺はほんとにもう真撰組なんかどうでもいいんだぜ」
「嘘だそんなの…」
言いながら俺はだんだん、不安になってくる。
土方くんは俺のこと好きだけど、きっといざ真撰組がいたらかえっちまうんだ。今は外に一歩も出してないから上手くいっているだけで。
出しちゃいけない。
出したら魔法がとけてしまうんだ。
だから、
一生この檻の中に。
とじこめなきゃ…。
「ここに来てから近藤さんの名前も真撰組のことも言ったことねぇだろ」
「ほんとは帰りたい?」
「そんなこと言ってねぇだろって」
「俺のもんだよ十四郎は。帰さない」
「帰りたくなんてねぇって」
「なんかすげぇ不安なんだ。近藤とか、殺せば安心できるかなぁ」
「な、に言ってんだよ」
「この世から近藤も沖田もジミーもハゲも消しちまえばいいんだ、そしたら…」
「馬鹿言うなっ」
「…何で焦ってんの?」
うなじにキスをするといい香りがして、土方クンの首筋に噛み付いた。ぞくぞく背中にキテいるのがわかる。食欲と性欲が繋がっているっていうのは本当の話だなと思った。
「だってよ、お前…」
「心配してるんだ、皆のこと。…俺以外の誰かのこと」
「違う!おま、総悟も近藤さんもすぐやられるたまじゃねぇんだぞ。返り討ちにあう。お前のこと殺人犯にしたくねぇしさ。な、俺ァお前を心配してるんだぜ」
「…それも、そうだけどね」
「なぁ、そんなくだらねぇことしなくたっていいじゃねぇか。もう二度と会うようなこともねぇ連中だ。そんな暇あるならここにいてくれよ。ここにゃ俺とお前の二人っきりだろ」
勢いに任せて早口で土方くんの目はどうみたって泳いでいた。
「なぁんか、気にくわないんだよ…」
低い声で言うと土方くんがおろおろしだした。
「何で…」
「近藤の道場に拾ってもらったってことはあのゴリラと同棲してたってことだろ?」
ああ、土方くんが今にも泣き出しそう。
「同棲って…寝床をかしてもらってただけだろっそんな…」
「ジミーも沖田君も十四郎になつきすぎ。絶対あの二人俺の十四郎のこと好きだぜ。ゆるせねーんだけど犬のくせにさぁ」
「ンなわけねぇって。俺のこと殺そうとしてるんだぜ、総悟は」
「ハゲは十四郎と一緒にいすぎだしさぁ」
「勤務中だけだろ」
「やっぱ殺そうかな」
「やめろ。…やめてくれッ」
縋りつくようにして土方くんが叫んだ。
「どうでもいいんじゃなかったの?それとも俺がヘマするように見える?」
「そういう問題じゃねぇって。じゃあ俺がチャイナ娘と眼鏡坊主殺してもいいってのかよ。一緒に住んでんじゃねぇか。そうじゃねぇだろ?そういや眼鏡坊主は俺なんかよりずっと華奢だしチャイナ娘もあと三年もすりゃ立派なレディーだろうよ。もう抱いてんじゃねぇだろうな」
最初は叫んでいたけど土方クンらしくだんだん口調は落ち着いて、今まで取り乱していた自分を抑えるためか後半は冗談をひきつった笑顔で言った。
「うん」
「うん、って…」
「神楽も新八も抱くわけないだろ。俺は十四郎以外興味ねぇ。俺がうんって言ってるのはその前の話」
一瞬土方くんは眉をよせて、直後に意味を理解して顔の色を変えた。
唇が開くが声が出ないのかわなわなと震えている。
「…は?」
「殺してもいいよ」
だから俺は、はっきりと言い切った。
「な、に」
「あいつ等のこと殺してもいいよ。それで十四郎が満足ならいいよ」
俺には土方くんが全てなんだって、まだ伝わってないのかな。
 
 
 
 
前A
 
 
「自分が何言ってんのかわかってんのか?」
土方くんこそ自分が何言ってるかわかってる?
俺のことわかってないんじゃないかな。
「俺が殺してきてあげようか。お願いしてくれるなら何でもするって言ったろ?そりゃ俺だってあいつ等のこと殺したくないけど十四郎のためなら仕方ないなぁ」
「…そんな、あんなガキ二人…」
青ざめたまま土方クンが下を向く。
「俺が今から殺してこようか?」
「やめろよ」
「どして?」
「人殺しになるんだぞお前」
「それで?別にいいんじゃないかな」
「突然あの二人が殺されたら犯人はお前しかいねぇだろ」
「そうだねぇ」
「お前等三人で暮らしてたのは歌舞伎町のやつらなら皆知ってるんだぜ。やべぇことになる。万が一家宅捜査とかされたら、俺の部屋だってみつかっちまうんだろ」
「あー。なるほどぉとーしろーは頭いいなぁ、その通りだな。それじゃ殺して二人で引っ越そうか?どっか山奥にさ。そしたら問題解決だろ」
「やめ、ろって」
「…嫌なの?」
「人殺しだろ…。な。やめてくれよ」
俺は本気だった。土方くんが頷いたら無邪気にTVゲームでもして遊んでるあの二人の首を切って土方クンに差し出してあげるつもりだった。
でも何だか怯えてるみたいだね。
どうして?もしかして俺と山奥で二人っきりになるのが嫌なのかな。真撰組の連中のこと心配してるのかな。そんなの腹立つんだけど。
「俺、この部屋のことも気に入ってるから出たくねぇんだ」
「震えながら言われても説得力ないよ」
俺の目の前で裸でいるんだ。俺には隠し事なんかできやしない。
「…もうそろそろ時間だね。お弁当買ってきてあげるよ」
土方クンのために買ったおそろいの携帯を忍ばせて、立ち上がった。土方クンは力なく下を向いていた。
「買い終わったら電話するからとってね」
「…わかった」
力のない小さい返事が聞こえた。
「言っとくけどこの話終わってねぇから」
びくん、とまた土方くんが震える。…なに、もう終わったと思ってたのかな。
「じゃ、いってきます」
うなだれている土方くんのおでこにキスをして、部屋を出た。
 
 
それから用事が終わって、
 
 
 
…色々あったあと。
 
 
 
 
電話をならす。二回目のコールで、もしもしという小さな愛しい人の声がした。
『十四郎。買えたよーいやぁすんげぇ人だった。さすが人気店だけあるねー』
電話のくせに名前は名乗らない。だって俺だって言わなくたってかけてくる人は俺しかいないから。
俺はようやく土方クンの一つ目のお願いを聞いてあげられた。俺はいい気分になって鼻歌まじりに、二人分の弁当が入った袋をさげて帰路についていた。
『ああ、そっか。悪いな』
『いーよ。ってかもうすぐ家着く。ごめんなーすぐ電話してやれなくって。色々あってさ』
『色々?』
『うん。ま、それは帰ってから話すよ。あー十四郎の声聞けて安心したァ』
『そうかよ』
『十四郎俺がいなくって寂しかった?』
『ああ』
『そっかァ。じゃ走ろうかな、走ったらあと五分弱で会えるし。あーでもそしたら電話できないなぁー声聞けなくなっちまう』
『あとどの位なんだよ。ってかどこまで行ってたんだ』
『今は〜大江戸病院の近く。これでも結構歩いたんだけど』
『大江戸病院からここまで走っても五分じゃ無理だろ。スクーターのってねぇだろ?』
『スクーターなんざ乗ったら並ぶの不便だかんな。俺の脚力すごいよ半端ないよ?それに愛の力というターボで加速つけたらマジ五分で帰れるよ』
『ばか、そんなことあるかよ。ゆっくり帰って来い』
『うん。…でも早く会いたいな』
『俺もだよ』
愛しいってすごい感情だ。
 
あと三十分もしたら絶対会えるのに、どうして電話を切れないんだろう。
 
 
 
 
 
 
 
「ただーいま」
カラクリにむかって話しながら部屋の扉をあける。
「おかえり」
そしたら携帯片手に笑ってる土方くんが迎えてくれた。
ただいまのキスをして、俺は笑った。
「結局帰ってくるまで話し続けちゃったね」
「切るタイミングがねぇからな」
「ホント。でもやっぱ生の土方クンが一番だぁ。ほら、お弁当食べよ」
やっと買ってこれたがさがさ音をたてて弁当を取り出してさっそく取り出してあけてみせる。ぱぁっと土方クンの顔が明るくなった。
ああ。俺この顔が見たかったんだ。
「すげぇな」
さすが人気なだけあって入れ物からして漆塗りのお重箱。中身が三段になってて、いかにも美味そう。一番上の大学芋なんか黄金に見えるくらいだ。
「美味そうだろ。大変だったんだぜ。でも俺十四郎のためだと思ってさ頑張ったんだ」
「ああ。さんきゅ」
「また買ってきてやるよ。…ほら」
割り箸を割って、料亭らしく色鮮やかで豪華な弁当の真ん中にででんと反り返ってる大降りな海老を土方クンの口元に差し出した。
「ン、美味い」
俺の手から飯を食ってるところも、口いっぱいほおばって食ってるのもたまらなく可愛い。
「そっかそっか。俺にも食わしてよ」
「ああ。これがいいか?さっきの海老」
「大学芋がいいなぁー」
「いきなり甘いモンから食うのかよ。まぁいいや、ほら口あけろ」
けらけら笑いながら箸でつまんで食べ物を差し出してくれたから俺は素直に口を開いてパクついた。
甘くてほくほくしてる。とろとろの蜜が口で甘く広がっていい感じだった。
「…ン。美味い。ありがと」
「じゃ次は…」
また食わせてくれるつもりだったのか、弁当に目をむけていた土方クンにキスをした。
不意打ち食らった土方クンが目を丸くした。子供みたいな顔だ。可愛い。
「ゴチソウ様です」
「…今じゃなくても食えるだろ。飯のときぐらいじっとできねぇのかよ…ったく」
呆れたようにため息をつきながら少し嬉しそうだった。
それが俺にはたまらなく、愉快。
「あーやっぱ十四郎が一番うめぇわ。でも飯のときだから一回で我慢するよ」
「はいはい。馬鹿言ってねーでうめぇからお前も食え」
「うん。今度は口移しで食べさしてよ」
「一人で飯くらい食えって」
 
 
そうして二人で仲良くしばらく飯を一緒に食って笑いあった、あと。
 
 
「…ところでさ」
満腹してごろごろしてる土方クンは機嫌がよさそう。
「ン?」
ああ、やっぱり。声でわかるよ。でも何でだろ。機嫌いいっていうより良いフリをしてるっていうか。
俺の機嫌を、とろうとしてるふしがある気がする。
「さっき電話するの遅れてごめん。実は色々あってさ」
「ああ、言ってたなァ。何だってんだ」
「ムカつく連中をみかけちゃってさぁ」
「へぇ…」
あれ?土方クンの表情、くもってるのは俺の見間違いかな。
「真剣ぶらさげて物騒な黒い制服のむさくるしいオトコ集団。ほんと、うざい」
うん。やっぱ見間違いじゃないね。今度ははっきり怪訝そうな顔を一瞬だったけどした。
「しかもさぁ話かけてくるんだよ俺に。ジミー君とかいう奴なんだけどね、こいつがまた地味なくせにうっとーしいんだよ」
「そう、か」
「行方不明の人がいて今必死に探してるんだってさ。その人はさぁ、そのジミー君の上司でね。いなくなったとき一緒にいたハゲの隊士は半死半生ってかんじで口も利けない重症で」
「…ぁぁ…」
「何でも、その場で俺の姿が見かけられてたらしいぜ。ほら、俺有名人だしいつもその辺ぷらぷらしてるからさぁ。なんか知りませんか見てませんかってほんとうぜぇのなんの」
「そ、そうか。そりゃ…難儀だったな」
微妙に土方くんの視線がそれていく。おいおいどこ見てんの。
俺は土方くんの顎を掴んでこっちを向かせた。
「ムカつくよな…あいつ等歌舞伎町中を這い回ってやがる。そのいなくなった人ってのがスゴイ美人だったみたいだよ。きっと好きだったんだ。だからあんな必死になって探し回ってるんだ。連れ戻すつもりなんだよ。ふざけんなよ。ほんと腹立つ。なぁ、十四郎。むかつくよな?」
「ああ、ほんとだなそうだなお前の、言うとおりだ」
俺の機嫌を必死にとっているようにしか見えない。
鼓動を整えきれずにはぁ、っと土方くんが息を漏らした。…どうしたの土方クン、そんな動揺しなくたっていいだろ?
「虫みてぇ。目障りなんだよあいつ等…忘れられねえんだか何だかしんねーけど。いなくなったんだからさ、もうその人の居場所じゃなくなったんだと思わない?そうだろ?なぁ」
「…ァ、ああ…あは…そうだな。まぁいいさ、そんな他人の話は。どうでもいいよ」
喉がひくひく、震えてる。
「古い場所にそろそろ消えてもらって、いなくなったその人は新しい居場所で幸せに暮らすべきだよな」
「そうだな。なぁ、その話しはもういいじゃねぇか。俺達には関係ねぇ話しだろっ」
「…木刀じゃぁ頭かちわるの苦労するよな。今度真剣かってこなきゃ。ねぇ?」
「…ッ…!!!」
「どうしようかな。全員真剣で切り殺すのもつまんねぇよな。ジミー君は特にむかつくから、体に石くくりつけて溺死させて…」
続きは言葉にならなかった。急に抱きついてきた土方クンがきつく押し付けるようなキスをしてくれたから。
また俺に自分からキスしてくれたんだ。ふふ、嬉しいよ。まさかジミーを殺すなんて聞きたくなったから・・・ではないよね。
信じてるよ土方クン。
「もぉ、いいって。そんな話つまんねぇよ。せっかく帰ってきてくれたのに」
「つまんない?そうかなぁ」
「ああ」
「聞きたくないだけでしょ?ずるいなぁ十四郎」
「ずるい、って何」
「この話は終わってないよってさっき行きがけに言ったはずだけど忘れた?」
「何言ってんだ。お前が言ってたのは垢の他人の話しだろ。関係ねぇじゃねぇか」
「へぇー…それでごまかせたつもりか?
「まさか。何でそんなこと言うんだよ、銀時ィ」
ああ、俺は本当に馬鹿だ。
媚を帯びた甘い声が、名前を呼んでくれるたびに胸が弾む。何度よばれたってなれないよ。
また俺が喋ろうとして唇を開いた瞬間、声を出す前にまた影が重なって土方クンのキスがふってきた。
「ぎんとき…」
その次の、信じられないような言葉が、さっきまで触れていた土方クンの真っ赤な唇から漏れて俺は思考が一時停止した。今、何て?
体をぴったりとくっつけて抱き合った状態でもともと体格が一緒なので吐く息もあたるほど顔が近くて俺はどきっと、した。
見慣れたはずなのに、綺麗な顔立ち。白い肌。俺を貫いてくる、目。
 
 
見とれていると、土方クンの手が俺の足の狭間をズボンの上から、手のひらで優しくもみこむように刺激してきた。
何、と言おうとして口を開こうとする前に土方クンが俺を見上げて、言った。
 
 
「ぎんとき…ヤろ…」
 
 
 
後@
「本気で言ってんのかよ」
「銀時…しよぉぜ、セックス」
俺を見上げる目は潤んでいる。俺に体中を擦り付けて、…俺を求めている。
「嫌なのかよ…?お前だってたまには俺からおねだりしろよって、言ったじゃねぇか。恋人なんだろ」
ほんとに?
「ヤりはじめたら抑えきれそうにないぜ、俺。わかる?」
もまれている股間が、もう服の上からでもわかるほど立ち上がっていることに俺自身もわかっていたし、この欲望を受け入れなければいけないと土方クン自身がわかっていたはずだった。
自分の穴ン中いれるために奉仕して勃起させて大きくさせているのだと思うとまた興奮してくる。
欲しいんだ…俺のこと。
「わかるよ…」
土方君が差恥のせいなのか、白い頬が赤く染まってきている。
たちあがったソレはもう大きくなって片手では刺激しきれなくて盛り上がったそこを両手を使って扱き始めた。
「いいこだね」
真っ赤な顔をしながら頑張っている様子を見て土方くんを褒めてあげた。出来れば服を脱がせて直接やってほしいのだがこのままなのもはずかしがり屋の土方くんらしいから許してあげようかな。
「大きくなってきたじゃ、ねぇか」
「土方クンがさわってくれるとね。ねぇ。俺のちんぽいれられると気持ちいい?」
「うん…きもちい…」
「じゃあさ、俺が土方くんにいれた初めての人?」
「そうだよ」
「そっか。それじゃ大きいっていうのは誰と比較して言ってるの?」
半分笑いながら、たずねた。
「そんなの…一般的にだよ」
「ふぅん」
「俺、男だらけのところに住んでたし風呂も共同風呂だったし。だから…」
「へぇ、共同風呂ねぇ。あの虫みてぇな男集団が土方クンの綺麗な身体見てたんだ」
あんなクズ野朗どもが俺の大事な恋人の身体見てたなんて許せない。記憶から消してやりたい。そのために脳味噌ぶっとばしてやりたい。
「そんな、見たなんて」
「この綺麗な顔おがませてやるのももったいないのに」
くい、っと土方くんの顎を掴んで上向かせて顔をよく見る。こんな綺麗な顔他にないよ。
「この白いうなじも…」
指先を首筋にあててすうっと撫でる。
「腰も…」
腕をおろして体中を撫でた。なだらかな曲線とは言わないが引き締まった身体は弾力があってここちいいし、肌もすべすべして綺麗。
「ぁぅ…」
「ここも見られちゃったんだね」
腰からさらに位置をおろすと膨らんだ二つの双丘があって、撫で回してからつねるように揉んだ。身体が竦んで、俺に奉仕してくれる指も一瞬動きが止まった。
「アナルは誰かに見てもらったことある?浴槽でお尻触られたりしてない?」
「やだ…あ…そんな、あるわけない…」
「ほんとかなぁ?近藤ゴリラにアナルぐちゃぐちゃにしてもらったことはないのかな?同棲してたんだろ。あのストーカー野朗、夜這いかけたんじゃないだろうな」
言いながら俺は想像した。
大柄で毛むくじゃらのゴリラみたいなアイツが土方くんを蹂躙しているところ。
抵抗も出来なくて泣きながら犯される大好きな大好きな土方くん。そんなのは許せない。
ひじかたくんを泣かせてぐしゃぐしゃにしていいのは俺だけ。
「近藤さんはそんなこと、しねぇって」
「へえー近藤さんは良い人だからそんなことしないってか。本当かなぁ。もしかして寝てる間に犯されて開発されてたんじゃない?俺が初めてのくせに感度良すぎでしょ。あーそうだもしかして沖田くんとかジミーとか?」
「俺好きな奴としか、セックスしねぇよ。銀時としかしてない」
「俺は嘘つきは嫌いだ」
「俺が嘘つきだっていうのかよ」
「俺に、真撰組の連中を殺してほしくないからそんなこと言ってんだろッ」
土方くんの瞳が悲しげに不安げに揺れた。
一瞬視線を伏せたあと、震える手で俺の肩にかかる白い着流しと一緒に黒の着物を脱がして落とした。腰に巻いているために下までは落ちず腰でだらりとぶらさがっている。
そうしてむきだしになった俺の胸板に頬を摺り寄せた。
いかにも愛おしそうに。
「愛してるよ銀時」
胸の奥がじんわり熱くなった。土方くんの愛情で、俺の氷みたいにがちがちに固まってた心が溶けた気がした。
それでもとけ残った俺の冷たさが、最後に「嘘だ」と言わせようとして、口を開いた時。
「好きだ。好き」
そう言って俺の腰に土方くんの腕がまわった。
「何で今更嘘だなんていうのかわかんねーよ。あんなに好きって言ったしキスもしたしセックスもしただろ」
言いながらぎゅっと抱きしめて、顔をすりよせてくる。
「信じろよ。真撰組が助かろうが助からなかろうが、俺はもう目にすることもねぇだろ」
俺の心がとけてく。あったかくなってく。土方くんがあっためてくれたと、思った。
「俺にはもうお前しかいないよ。だってもうお前しか俺のことを必要としてくれないし愛してくれないだろ」
するりとベルトを外され、俺の服は全部すとんと下に落ちた。
「銀時…真撰組なんかに構ってないで俺に構ってくれよ。一緒にいて…」
土方くんは俺の腰に抱きついて、膝をついた。
それから下腹に顔をこすりつけたあと、ちょうど顔の高さにある完勃起した俺のモノの先端にキスをした。
「ん…んぐ…」
土方くんが目を閉じて、口を大きく開いて一気に俺のものを喉の奥まで入れた。口いっぱいに俺のを含んで息をし辛いのかひくりと背中が動く。
「口、痛いんでしょ?」
俺の問いかけに、曖昧な顔をして笑った。
びちゃびちゃと舌を左右に動かして裏筋を舐めあげながら口をすぼめて口内の俺の竿を締め付ける。俺が朝突っ込んでたおかげでずいぶん上手になった。
「痛いなら、いいんだよ」
優しく俺がそう言っても必死に嘗め回している。
「ン…むぅっ…」
俺が不満でそんなことを言ったと思ったのか、肩で息をしながら袋を手で揉んでカリの部分を舌で押した。
痛いだろうに。
「いいんだって」
俺は土方くんが可哀想になって、足の狭間で揺れている頭をゆっくりと俺の腰から離した。しばらく抵抗していやいやするように頭をふっていたけど俺が少し力をこめると本気なのが伝わったのか最後に先端をちゅ、っと吸って口を離した。
土方くんの口の端からつう、と粘液が漏れる。
「そんなに下手だったか?」
顔をあげた顔は申し訳なさそうにしゅんといていた。
「そうじゃないよ。…そんな顔しないで」
俺は優しく笑いかけて、土方くんの髪を撫でてあげた。
「痛いならしなくていいんだよ。ごめんな、疑うようなこと言って。愛してるよ」
嬉しそうにほほえむ恋人を腕の中にすっぽりとおさめてぎゅうっと抱きしめた。
「俺も愛してる。俺のこと信じてるか?俺はお前だけにしか足開いたりしねえ」
「うん…信じてるよ。ほんとに俺達恋人同士だって」
「良かった」
「口、痛かったろ。大丈夫?してくれたのは嬉しいけどさ、十四郎が痛いのは嫌だよ。無理してそんなことしなくったって十四郎のこと信じてる」
「下手じゃなかったか?」
見上げてくる仕草がいじらしかった。
「そんなことなかったって。ありがと」
実際のテクニックはさほどでもなかったが、気持ちがそれをカバーした。…嬉しい。
「でもさ…ここ、苦しいだろ…?」
土方クンが俺のぱんぱんに膨らんだペニスを摘んで聞いた。俺は何も言葉が出なかった。
反り返って血管が浮き立ったそれは嘘でも平気だとは、言えない状態だった。
「じゃああれ、してやるよ」
土方クンが艶っぽく、笑った。
 
 
後A
 
「はぁ・・・・ンっ」
すりあげる音がして、ぬめぬめしたものが柔らかい肉と一緒に押し付けられる。
「くっ…」
俺は脊髄の中を電流が通ったような快感に襲われてうめき声をあげた。
俺の反りたったペニスが土方クンのペニスとぶつかってこすれあって熱い。手で体重を支えて俺の腰に乗り上げた土方くんは足の付け根の柔らかい太ももで俺のアレをはさんで締め付けた。
土方くんが足を上下に動かすたびにじゅ、っと水音がし、腰が揺れて、アナルが俺のペニスの根元に触れては離れることを繰り返す。硬い芯と反対に柔らかいままの袋に、ぱっくり開いた穴が押し付けられて跳ね返されるたびに俺は興奮する。
イれたい。
柔らかくなって、土方クンのアナルがとろけてる。
今すぐ…。
「ぎん、ときぃ」
「は…っ…、どしたの…?
舌ったらずに名前を呼ばれて更にたかぶった熱を、長く息を吐いて逃がしてから優しく微笑みかけた。
「ぎんとき…気持ちい?」
上目遣いに聞いてくる可愛い恋人が愛しくってたまらなくて頭を撫でてあげた。
「…うん、気持ちいいよ。やば…」
そう言うと嬉しそうに笑って内股にして腰を浮かし、根元をぎゅうっと柔らかい肉が押さえ込んできた。中のまとわりついてくる柔らかさとはまた違った肉の感触だ。鎌首もたげた俺のものがぴくぴく足の間で動いて生き物みたいに見える。
「素股なんてどこで知ったんだよ。…っもちイー」
「ふ…俺なんか下手だろ、が…」
「ン?上手だよ」
「嘘つけ」
「ところでさ、もうイれていい?」
太ももの動きがぴたりと止まる。何かいいたさげな目でこちらを見つめてきた。
「ほら、やっぱり」
「ナカ、入りてぇんだって。お願い」
「いーけどなー」
ふてくされているだろう恋人の髪をなでてなだめるように言う。
「拗ねてるっしょ。気持ちいーよ大丈夫」
「あーあ。こんなに頑張ったってのになー」
「十四ろーってば。なー下手とかじゃないって」
「ふーん」
「でもさぁ、ほら。男のウナギはぁ、濡れた穴ン中に入りたがるもんなのよ」
「…下品」
呆れたじとっとした目に変わる。俺はそれがおかしくて笑った。
「あーごめんねー俺はお育ちのいいほうじゃねぇから。まぁでも十四郎も一緒か」
「つまり育ちの問題じゃねぇってことだろ」
「…ねぇ」
体重をかけてぎゅっと抱きしめて、今度は耳元で囁いた。
「冷たいこと言わないでくれって。悲しくなるだろ」
「…お前が、悪いんだろ…」
「こんなこと言う俺は嫌い?」
「お前なんか前から下品な男だ」
「はは…俺のことよく知ってるんだねぇ」
「ふん」
「じゃあ俺のウナギの気持ちわかってくれるでしょ」
「言い方が気にくわねーんだよ。なーにがウナギだ」
「はいはい」
背中に回していた腕を腰にかけて引き寄せる。
細い腰だった。同時に丸くて綺麗な曲線をしても、いた。
「ねぇ。いい?」
軽く腰を持ち上げて指で軽く、もうすぐ結合するだろう部分に触れた。
「・・・・」
まだ臍を曲げているのか、怪訝そうな顔で俺を見る。
「だめ?いや?…頼むって」
下から覗き込むように見上げて甘えてお願いすると。
「…ん」
諦めたのか照れ隠しなのか、ため息まじりに目を閉じて俺の肩に腕を回した。
「やった。ゴーサイン出たね。とーしろー大好き」
ゆっくり腰を導いて、俺の上に跨らせる。
今でもイれるときは腰が震えるのが、可愛い。
俺は背中を撫でてあげた。大丈夫、痛くなんてしないよ。
「あ、これ」
「ンッ」
先端の、ほんの少しが粘膜に包まれる。俺からするとほんの少しでもどかしい、がおそらく膨らみの部分は最も圧迫感のあって土方クンには辛い瞬間。
うめき声とともに土方クンの全身が強張って、顎がぴくんと上向く。
喉を無防備にこっちにさらけだされるとあまりの白さにくらいつきたくなった。
果物に齧りつきたいような、そんな気持ち。
そうして俺は誤魔化すように軽口を。
「この体位、あれだ。座位ってやつだ」
「ァ、ぁあっ」
ズプズプと粘膜のこすれる音がして俺は先端から順番に締め付けられ、あんまりの快楽の波に脂汗が出そうだった。
喘ぎ声を出す唇が熟れきった果実のように思える。
「きもちいー。座位、これから多用してみよーか。騎乗位でもいいよ」
「…ちったぁ黙ってろっ、ばか…」
「あーあ。怒らせちゃった」
なのに俺は、楽しくて嬉しくて、たまらなかった。
 
 
 
 
 
 
後B
 
「ァ、あ、ンッ!」
一際高い声をあげ身体をしならせて土方クンが白い液体をぶちまけた。
白い腹に自らの液体がかかる。その瞬間の締め付けに俺は熱い息をはき、同時に達した。
「ゥ、あっ」
びくびくと数回、抱きしめていた身体が痙攣して、力を失って俺のほうに倒れこんできた。
はぁ、と吐く息が俺の汗ばんだ肩にかかった。
動くと同時に結合部分も擦れて、敏感になっているそこが疼くのかまた土方くんが子犬のような声を出した。
「だいじょーぶか?今日ちょっと激しかったもんなァ」
「ン…」
俺の放った粘液が腸にぶちまけられて、土方くんはまだぴくぴく、としている。
長い睫毛が揺れていてとっても扇情的で俺ノがまた反応するんじゃねぇかと少し不安だった。
背中を撫でて落ち着かせてやる。
「ね、この体位辛い?痛かったりした?」
まだ息も整わなくて言葉も出ないのか、ただ左右に首を振って応えられる。
「良かった。…きもちよかった。なぁ…」
「ん、ン?」
はぁ、って漏らされる息まじりに返事がやっと返って来る。
「好きだよ…」
もう何度言っただろう。それでも物足りないくらいだ。
とん、とん、と子供をあやすように土方くんの心臓の鼓動にあわせて背中を叩く。
そうしながら俺は俺自身を癒していた。
「抜きたくないよ」
「…あほ」
「十四郎から離れたくねー」
「どこにもいかねーだろ…」
「ずっと一緒にいてぇんだ。何か、このままでいりゃ繋がってられる気がすんだよ」
「変なヤツだ。つーかやっぱり下品だなテメェはよ」
「十四郎」
「…なに?」
「…しよう…」
「今なんて?」
「結婚しよう」
俺は真剣だった。まっすぐ土方クンの顔を見て、おそらく死んだ魚のような目は輝いていたはずなのだけど。
「ばぁか」
「何で」
「こんな時に言うことかよ」
どうしようもなく恥ずかしくなって頭をかきむしる。真剣だったのが空回りして、それが照れくさかった。
「今…ろまんてぃっくーな雰囲気かなぁなんて…」
「ベッドでか。こーんなお前、入ったまんまで。…真剣な面しやがって」
「だってさ、本気だから」
これは弁解のチャンスだと思って慌てて口を挟む。
格好つけるつもりだったのがどう考えたって、かっこよくない。
…よく考えれば繋がったまんまのこの体勢からして間抜けだったのだけど。
「結婚したいよ。愛してる。結婚しよう。ずっと愛してるって誓うよ」
「…結婚…」
「そう。結婚」
少し汗で湿った髪を撫でて俺は微笑んだ。
「市役所にはいけないけど、結婚しねぇか。2人で暮らしてぇ」
「結婚っていうのかよ、それ…」
「言うって。永遠に結ばれるのが結婚だろ。じゃ、出来るじゃん」
「屁理屈だ、そんなもん」
「教会にはいかねーけど、聖書もったハゲの外人のオッサンが言うんだ。『妻を永遠に愛しますか』って。俺は愛するよ」
目を伏せてすいっと土方クンが目線をそらした。頬に赤みがさしていて、俺の顔の筋肉が緩んだ。
「神楽も新八も家から追い出す。俺達の邪魔はさせねぇ」
そういうと土方クンが凄い勢いで顔をあげ、目を限界まで見開いた。唇がわなわなと震えていた。
「な…おま…」
「本気だって言ったろ?あいつ等なんかもう邪魔だよ。追い出したってあいつ等には志村家があるだろ。別に遊びに来るなたぁいわねぇしさ」
戸惑って、困った顔をされた。
土方くん、子供好きなんだな。いいと思うよ、子供好きなのは家庭的で。きっと俺の良い嫁さんになってくれる。
「餓鬼どもだってそんな素直に出ていきやしねぇだろ」
「そうかもしんねーな。でも関係ねぇよ。追い出す」
「でもさ…」
「あいつ等が可哀想?」
「そりゃ前からずっと住んでんのに急に…」
「でもあいつ等だって俺がいないほうがいいんじゃない?ラブラブっぽいし。で、俺も十四郎と2人で暮らしたい。これで問題解決。じゃねぇ?」
「だからって…あいつ等仕事があんだから来るだろ?」
「仕事があるときだけ呼びだしゃいいんだよ。あいつ等家にいてもごろごろしてるしかねーんだから」
「でも」
「もう言うなよ
反論の言葉を出そうとする、その唇を指でなぞって制止した。
「俺は2人で暮らしてぇの。重要なのは十四郎もそうしたいかどうかだろ」
何も言わない。
「どう?嫌?」
くい、と撫でていた手をおろして顎を掴んで上向かせる。
その瞬間土方クンは目を伏せて、唇を噛んだ。
「結婚しよう」
もう片方の手で土方クンの手をとって、誓いのように薬指に口付けた。そして顎を掴んでいた手をそっと外して、口元に差し出した。
それでもまだ土方クンは迷っているようだったが。
「さぁ」
俺の声を聞いて踏ん切りがついたのか、俺の薬指にキスをくれた。
唇をつけたまま見上げてくる土方クンと目があって俺は微笑んだ。つられるように笑った土方クンの頬を撫でて。
「ありがとな」
そのあとぎゅうっと抱きしめた。
 
幸せだった。
十四郎。大好き。何度も言ったし何度も思ったけどこの言葉は色あせない。
こんな気持ちになった時皆、結婚を考えるんだろう。俺には縁がないと思っていたけど。
俺の全てだ。心から愛してる。
こんな時間がずっと続けばいいと。
 
 
 
 
 
…思っていたのに。
 
信じて愛した分、裏切りが俺の心に、深い。
 
 
 
 
 
Bから銀さんが暴れだして気持ち悪いので逃げる方は今のうちに逃げて下さい。
 
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